世の一部の報道が強調され、ネットで誇大にいろいろ書かれているのを見ると、税理士実務のダイナミックさが理解されることなく、一直線に受験者数が減少しているようですね。

2010〜2017の出願者比較

税理士試験:
2010 62,996人
2017 41,242人 (2010年比65.4%)

司法書士試験:
2010 33,166人
2017 18,831人 (2010年比56.7%)

司法試験:
2010 11,127人
2017 6,716人 (2010年比60.3%)

公認会計士試験:
2010 25,648人
2016 10,256人 (2010年比40.0%)



う、うひょーーーーー!
なんだなんだ!?
軒並み激減?!

税理士以外の士業がどのような状況なのか知りませぬが・・・


思うに、税理士実務のダイナミックさ・魅力が世に伝わっていないのではないのかなぁぁと思ったりしております。
もうすぐ平成も終わろうとする昨今、税理士業界はずいぶんと変わりました。
ワタシがこの業界に入った平成1桁のころは、記帳代行・税務事後処理業務が主たるものというのがスタンダード。税制も今日のように複雑なものではありませんでしたね。
ま、当時も十分複雑でしたが、国税と納税者とのイタチゴッコが続いて随分と複雑さが増したように感じます。

制度は複雑になりましたが、月次会計処理等の効率化は飛躍的に進歩しました。
PCも高かったし、会計ソフトメーカー押し付け機種限定だったし、業務ソフトも超高かった。
プリンターとかなんとかかんとかも超高かった。
それが今では、なんと汎用的になったことか!


いまはこんな感じ・・・
A いわゆる Big4
B 大人数低価格会計工場型 チカラ技的でグイグイやる事務所
C 少数精鋭 経営外部パートナーとしてのサービスに注力するコンサルティングオフィス
D 昔ながらの、約10人前後程度でやる記帳代行・税務事後処理業務中心とした街の会計事務所
E その他


ここ数年の新規登録税理士の状況を概観すると、4大事務所や大規模事務所等で登録する人が心なしか増えたような気配。
自分で事務所構えて開業税理士するぞーって人が昔より減ったような?!感じ。

聞くところによると、AやBのような大人数事務所に所属する人の思考は、経営者思考言うよりは組織人思考に振れている傾向があるとのこと。自分でリスクとリターンを取って、切った張っただのやるのとは別のよう。まあ、だからこその大組織。大組織しか手掛けることが出来ない案件ニーズに対応する意義があります。


Dのような事務所のなかには、業務改善が思わしくなく、不効率で長時間の昔ながらの業務スタイルで、「深夜残業上等!」とばかり、たくさんの仕事を抱えているようなところもあるやなしやに聞いております。
そんな事業所があるもんから、ネットであることないこと叩かれる。(苦笑)
ま、昨今はちょっとでも自身の意に沿わない業務運営がされている事業所はブラック企業だ〜 なんて面白おかしく書き立てる風潮はありますけど・・・ね。それはおいといて。



ウチの事務所は C のタイプ。
税理士実務というものはダイナミックな側面が多分にあります。
そう、切った張ったの世界も多い。
そうやってビジネスを一緒に大きくしていこうとする活力が、現場にあふれているわけです。
うまく切った張ったとやって、経営者の皆様に喜んでいただいたときが、私たちの喜び。

どうやって自社のビジネスを活性化させていこうか・・・ということを経営者の皆様と一緒になって取り組む仕事です。
これぞ、税理士実務のダイナミックさ。

こうした魅力が世に伝わっていないんでしょうね、きっと。
AIにとってかわられるかも知れない税務事後処理業務は、税理士実務のうち一部に過ぎません。
ニンゲンにしかできない経営判断実務の連続です。この仕事は。

そういう面を考えると、今の税理士試験は将来を見据えた戦略的な国家試験になっているとは到底言い難いですね。
・正解は何なのか公表されない。
・点数は公表されない。
・複数の回答案が想定されうるような、あいまいな出題も時々ある。
・租税法や国税通則法、会社法などの関連法規や判例研究など、実務思考を備えているかどうかを試す試験になっていない。
・AIにとってかわられそうな分野の計算問題を延々と問うような試験問題すらある。
・調べりゃわかる微細な数字規定を問うたり、重箱の隅をつつくような、どうでもいい問題すらある。
・苦労して長期間人生時間を拘束するので、変化の激しい世の中についていけないようなことになっている。

現状の税理士試験には、税理士業界の将来を見据えた戦略性がないのではないかと思う次第なわけです。
そりゃ、受験生は「AIにとってかわられる〜」と誤認して、受験を敬遠するわナ。

日本税理士会連合会は、税理士ってのはニンゲンにしかできない魅力的な仕事ですよ!と 世の皆様に解って頂けるような国家試験にすべく、税理士会役員の皆様におかれましては、各員一層奮励努力していただきたいものです。